わたしが高校を出て一人暮らしを始め、生活上必要なものを買い物に出かけるようになって考えるようになったことを簡単にエッセーにまとめてみました。
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まず本論で扱う”CustomerSatisfaction(以下CS)”について定義を与えたい。一般的には顧客満足と訳されるが、顧客が満足するとはどういうことか、以下のように考察した。
顧客は何らかの目的で財を購入する者であり、彼は購入した財から得る効用が、支払った対価よりも相対的に大きいとき満足し、小さい場合は不満を感じる。これは狭義的な顧客満足の定義であり、一般的に用いられる顧客満足はより広い意味で使われている。つまり、彼が感じる満足を決定するパラメータは、購入した財から直接的に得られる効用だけではなく、複数のパラメータによって決定される。例えば、顧客がテレビを購入する場合を考えると、テレビの性能、購入価格のみならず、購入した店舗での品揃えや、販売員の接客や説明、テレビの配送・設置などのアフターサービス、クレジットカードなどの決済対応、購入店の利便性(営業時間や交通アクセス)など様々な決定因子を複合的に判断し彼が最終的に感じる満足の大きさが決定される。経験的に顧客が得る満足と再利用率には相関があり、小売店にとっては顧客満足を最大化することは無視できない課題である。
本稿では、この顧客満足について流通という視点からこれを追求し、商業の発展の可能性を示す。
流通によるCSの追求
狭義的に流通とは分離された生産と消費を多層的に結ぶ連続した商行為および物理的輸送の全体または一部と定義できる。つまり、流通におけるCSを追求するためには、生産者が製品を出荷してから、最終消費者の手元に届くまでの物流や金流を検討するべきと考えられる。しかし、前述したように、CSは様々な要因により決定されることから、狭義的な流通を扱うだけではCSの追求には不十分である。小売店など最終消費者との直接的接点をもつノードから、生産者へ販売に関する情報が渡され、これを生産者が製品の企画や研究開発など事業戦略の投資配分にまで利用しなければ、CSを最大化することはできない。そのため、本稿では、小売店など直接最終消費者との接点となる主体に注目しながらも、特にことわりのない場合、上述したような生産者の活動も含んで、流通によるCSとして議論をすすめる。
流通、とりわけ小売店においてカスタマーサティスファクションを高めるには大きく分けて二つに分けられる。
・量的差別化(販売価格)
・質的差別化(品揃え・サービスレベル)
差別化における量的な「販売価格」と質的な「品揃え」は一般的にトレード・オフの関係にある。前者はディスカウントショップのように、特定の商品を大量かつ安価に仕入れるルートを有し、少ない種類の商品を安価に大量販売するカテゴリキラーのスタイルなどが考えられる。後者は、豊富な種類の商品を少量ずつ仕入れ顧客のニーズに合った商品を提供する百貨店・専門店などのモデルである。
量的差別化は他店との価格差異つまりコスト競争が最重要の課題であり、売れ筋商品を大量に仕入れ、死に筋商品を売り場から排除するやり方が取られる。いいかえれば顧客ニーズのボリュームゾーンをベースに商品を選別するため、競合間での品揃えは均質化される。ボリュームゾーン以外のニーズをもつ顧客は価格以外の要因で満足を得ることができず結果CSは最大化されない。
顧客のニーズに最も即した商品を取り揃え、かつその商品を的確に推薦できる場合、顧客は購入した商品から予想以上の効用を得ることができるため、CSも大きくなる。つまり小売店においてCSを追求する場合、低価格による量的差別化より、品揃えやレコメンドなど質的な差別化を優先しなければならない。
質的差別化を推進するために、顧客のニーズを効率的に把握する方法としてPOSシステムが導入されてきた。しかし、現状POSシステムは系列店やビックボックスなど大量販売を目的とする小売方式に合わせて設計されてきてきた。
本稿では、富士通の流通BMSサービス「TradeFront/AE」株式会社成城石井導入事例のケースを分析することで、専門店向けにCS追求を支援するPOSについて再考したい。
ケーススタディ
富士通の流通BMSサービス「TradeFront/AE」株式会社成城石井導入事例のケースを見てみたい。
株式会社成城石井は「食にこだわるお客様のニーズに応えた品揃えで急成長を続ける食品スーパーマーケットチェーン 」である。
同社は比較的早いペースで出店を続けておりこれに耐えうる発注のインフラが必要であった。またこれまでは、受発注のみをデータとして保持しており、タイムリーな在庫把握が困難であった。また受発注に伴う、検品作業や、伝票記入などの業務負担がかさんでいた。
流通業では一般的になっていた従来型のJCA規格EDIやWebEDIは回線速度の遅さや、作業の煩雑さなどその手順に限界が明らかになっていた 。そのため国際標準である流通BMSの対応のEDIを利用することで業務効率を向上させる必要がありました。現在でも多くの小売店は、データベース上での取引内容のトランザクションをバッチ処理によって夜間帯などに行っている現状がある。顧客にとって、欲しい時に欲しい商品が手に入ることは価値である。そのため、小売店側もリアルタイムに、POSに記録された売上データや、在庫の確認を行う必要がある。この在庫最適化を実現することがPOSの役割である。
リアルタイムな在庫調整
前述したとおり現状大量のPOSデータをまとめて記録するバッチ処理が主流である。しかし、顧客から在庫の有無を問われ即座に答えることはCSにつながり、また系列他店とのリアルタイムな販売情報共有は顧客へのフレキシブルな対応を可能としこれも顧客にとって大きなメリットとなる。こうした考え方から、近年ではこれまでのバッチ処理に代わり、分散ファイルシステムやオンメモリのデータベースを採用した、POSデータのリアルタイム処理を可能にするシステムをSI企業各社が競って導入を進めている。
小売店舗での在庫の最適化の重要性
顧客ごとの嗜好だけでなく、サイズなどにも細やかに対応が必要な服飾販売の業界ではどうしても在庫コストは大きくなる。都市圏に店舗をもつブティックは土地価格の問題があり豊富な在庫をストックすることができない。一方地方に倉庫を構える事のできるECではサイズごとに大量の在庫を確保することができる。こうした理由で都市圏の専門店舗がショーウィンドウ化するおそれがあると危惧されていることも事実だ。
今後の流通はどう顧客満足度を高めるべきか
これまで日用品を扱うスーパーマーケットやGMSなど大量販売に主眼をおいたリテールでは顧客の育成という側面を軽視しすぎた。
前述したように、売れ筋の商品を頻繁に入れ替えることで、売上を確保する売り方では、売れ筋商品への依存度が高いため、顧客は商品の価格のみを意識する。そのため、競合が価格での優位性を発揮すると顧客は他店へと奪われてしまう。その意味で、ロイヤルカスタマーを育成することは小売店にとって重要な課題である。
ではどのように顧客育成を行うのか。ひとつの方法が個人粒度での購買行動の分析である。これまでのマーケティングは顧客を年齢や性別、居住地域、可処分所得などでセグメンテーションにわけ、それぞれターゲッティングを行うことが標準であった。しかし、これは大量販売を効率化するための手法であり、真に顧客の満足度を高めるには別のやり方をする必要がある。ロイヤルユーザーがおり、生産性は低いものの安定的に経営を行っている小規模小売店は、販売員が顧客の嗜好やこれまでの購買行動を経験的に記憶しており、この知識を活かして顧客に最適な商品を薦めるほか、適切なタイミングで顧客に情報を提供するといったことが可能になる。
しかし、これは小規模な小売店で販売員が少ない場合はその販売員の能力の範囲で可能であるが、販売員が多数おり、かつ系列店を保有する大規模な小売店の場合こうした顧客ごとの細やかな対応は難しい。そのため、顧客の嗜好などのナレッジをシステムによって共有し、年齢などアトリビュートによるセグメンテーションではなく、顧客の過去の購買行動から顧客をグルーピングし顧客に対し次に最適なレコメンドやアクションの決定を支援する仕組みを構築するべきである。
短期的な売上を目的化するのではなく、顧客が得る効用を最大化することに主眼をおいた経営を行うことで小売店としての中位的ポジションを獲得することが望ましい。
また、冒頭に述べたように小売という部分での最適を目指すのではなく、生産者の開発や企画のフェーズを巻き込んでのバリューチェーン全体における最適を目指すべきだ。現在メーカーは販売を自社から切り離し小売店に依存している。しかし、こうした依存により、顧客の購買行動などのデータが小売店から生産者に伝達されない。こうした現状が続くと、顧客のニーズとは乖離した製品の増加につながるおそれがある。
本稿では、小売店がスケールメリットを生かした価格競争に執着せず、顧客に対し最適な商品、情報を提供することでロイヤルユーザーを育成し、顧客の満足を高める必要性を実際のケースを交え説いてきた。また、これを支えるためには、システム面からの支援が欠かせず、さらに技術的な進歩が求められる。実際にナレッジマネジメントを支援するシステムを導入する際のリスクや障壁を分析することが今後の課題である。
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